PDFファイルを作る(覚書)
1.
PDFファイルとフォントの関係
グラフィックの仕事で、クライアントにデザインチェックをしてもらう時に必須なのが、PDFファイルだ。ドローソフトのIllustratorやDTPソフトのQuarkXPressなどで作りこんだデザインファイルを、プリントアウトすることなく、誰にでも自分のパソコンで見てもらえるという優れものである。これはAdobe Acrobatという、デザイナー以外の人達の間でもごくポピュラーなソフトで作る。そういうわけで、割と単純なソフトという認識のもと、長年使ってきたのだが、実は思い通りのものを作る手順はかなり煩雑である、ということが、最近になってよくわかった。

最初は、OCFというフォントが使われていた時代だった。PDFファイルを作ると、どのマシンでも同じように見ることができるというのが最大のウリだったわけだが、その実、デザイナーが自分のMacintoshで作ったファイルを、フォントがインストールされていないマシンやWindowsで見ると、フォントが似た書体に置き換わる。それはそれで素晴らしい機能ではあるのだが、フォントにもこだわるデザイナーからすると、あなたの見ているそれは、私のデザインと似てはいるけど別物なんですよ、という意識を持ってしまうのがあたりまえのことだった。どうにも納得できないのだ。そこで、こだわりのデザイナー達がどういう処理をしたかというと、フォントをすべて文字データではなく、画像データとして処理してしまうという方法だった。ただし、この画像化の処理ができるのはIllustratorで、QuarkXPressではできない。
画像化されたフォントというのは、もはや文字データとしては機能しない。つまり、PDFファイルから文字をコピーすることはできなくなるのである。Illustratorでの仕事が多いこの世界では、文章内容重視の人達にとっては、これはとんでもないことだった。
そして、デザイナーからみれば、いくら文章内容重視のものが多いとはいえ、QuarkXPressから作ったPDFファイルで書体が変わってしまうのは耐え難いものがあった。
そこで現れたのが(New)CIDフォントというものだ。このフォントをPDFファイルにエンベット(埋め込む)すれば、フォントの形と文字データがともに記録される。見た目も内容もばっちりということだ。さらにこの段階で問題になっているプラットフォームの違いによる外字の文字化けも、さらに新しくできたOpenTypeフォントによって解決されることになったようだ。
2.
現在の状況
さて、私が現在使っているのは、New CIDフォントなのだが、もちろんこのPDFへのエンベットの機能に引かれて導入した。ところが、このエンベット機能を使ってPDFファイルを作ろうとすると、何故かエラーが頻発してファイルが作れない。ここで、腹をくくって徹底的に研究すればいいものなのに、本業とはちょっとはずれたところの作業にあたるため、なんとなくほったらかしのまま、せっかく高いお金を払って買ったフォントは、数年間本来の活躍ができないことになってしまった。要するにOCFフォントの時代のままでつい最近まできてしまったのだ。まあ、デザイナーはたいていパソコン関連では保守的な人が多いから、私の時代遅れもそんなに発覚しなかったのだが。
そして、先日、ついに徹底的な追及に及んだのである。そして、エラー頻発で不安定そのものだったAdobe Acrobatがようやく安定してくれた。
今、私が使っているMacintoshのOSは9.2。したがって、Adobe Acrobatのバージョンも古く、4.0である。なぜかAcrobat Reader 4.0も別に入っていた。そこへいろいろなファイルを見るために少しでも新しいバージョンの方が好ましいので、Acrobat Reader 5.0をインストールした。どうやら原因はこのあたりにあったようである。Acrobat Readerの複数のバージョンを同時に使っていると不安定になるらしい。先日Windowsマシンを購入したのを機に、閲覧はWindowsにまかせてMachintoshは作る方専門マシンに構築することにしたのだ。そこで、Acrobat Readerの4.0も5.0も削除し、Acrobat 4.0のみにしてみたら、ウソのように安定して、エラーも出なくなった。フォントのエンベット機能がようやく活躍できる環境になってくれた。長かったなあ。
3.
作業手順
ところで、MacintoshのOS 9では、システムフォルダのフォントフォルダにあまりたくさんのフォントを入れるとフリーズする現象がある。そこで活躍するのが、ATM Deluxe。これは、フォントフォルダにフォントを入れなくても、いろいろなソフトでフォントが使えるようになる設定ができるものだ。仕事別にフォントのセットを作り、仕事ごとに設定を変えながら活用する。
ところが、QuarkXPress のファイルからAcrobatでPDFを作るとなると、フォントはフォントフォルダに入れないとエンベット機能が働かない。そこでまず、ATM Deluxeを立ち上げ、その仕事で使うフォントのスーツケースを、optionキーを押しながらシステムフォルダ内のフォントフォルダの上に直接ドラッグ&ドロップする。そうするとフォントがコピーされて、再起動せずに、QuarkXPress のファイルからAcrobatでPDFを作ることができるようになるのだ。
PDFを作り終えたらすべてのソフトを落として、フォントフォルダの中の、コピーして入れたフォントファイルを削除する。この時、普段フォントフォルダに入れてあるファイルに色をつけておくと、削除するファイルとの見分けがつけやすい。この作業をする前にATM Deluxeを立ち上げると、いろいろうっとおしいメッセージが出るので注意。

やれやれ、書いてみるとたいした作業ではないが、ここまで手順を構築するまでにどれだけたいへんだったことか。たかだかPDFファイルを作るだけなのに。
2006年4月27日