デスクの上にはパソコン3台
1.
とうとうMac OS X を購入
「いまさらMac OS X」を書いてからすぐの2007年11月に、iMac G5 を購入した。OSはTiger。前回書いたとおりに、Leopardが出た直後に旧OSを導入したということだ。グラフィックデザイン用もWindowsにしようか、とか悩みまくっていたのだが、Macintoshにして本当によかった。画像がとにかく美しい。
フォントも「文字の話」で書いたOpentypeもNewCIDも使い放題という契約をしたし、DTPのソフトもQuarkXpressからInDesign CS3というのに乗り換えた。大変革の大散財だったが、懸念とは裏腹にたいへんに快適に使えるようになった。
さて、新マシンは旧マシンからの「乗り換え」のはずだった。しかし、いろいろうまくいかないもので、新マシンが快適であるにもかかわらず、「乗り換え」できない事態になってしまった。OSもソフトもやっと世間並みになって時代遅れ脱却だと思い、さっそく仕事で使おうとしたら、なんと世間の印刷業社ではいまだにOS9を使っているところがたくさんあることが判明したのだ。Illustratorのバージョンは8か9で、フォントはNewCIDじゃなきゃ不安で引き受けられない、などと言われるし、InDesignもちょっとウチでは、なんていうこともある。
時代遅れで肩身が狭い思いだったのが、一躍時代の先端を行くみたいなことになってしまい、面食らったのなんの。仕事上はやっぱり世間と足並みを揃えなければならないので、どうもOS9もまだまだ現役で稼働することになりそうだ。おかげで、「乗り換え」の予定は「増設」ということになり、デスクの上にはパソコン3台+スキャナがずらりと並ぶことになってしまった。私のデスクは畳1枚ほどもある大きさなのだが、いくら大きいデスクとはいえ、旧Macの本体は乗り切れずにサイドデスクにはみ出しているというすさまじい光景。いったい私は何屋なんだか。
2.
パソコン3台フル活用の仕事
昨年末から年始にかけて、新Mac購入の動機にもなった数十ページもある大物カタログの仕事をした。印刷所に、新たに導入したInDesign CS3で入稿したいというと、前述のように渋い返事。しかしこちらも大枚はたいて導入したのだから引っ込むわけにはいかない。すったもんだのあげくに、ようやくInDesign CS3を使って作りこみ、入稿はPDFでするということになった。
ところが、今度はクライアントサイドの要望で、中に使う図版やイラストは他の人が流用することがあるからIllustratorのバージョン8で保存しておいて欲しいという。新MacにインストールしたIllustrator CS3で作ったデータからバージョンダウンできないこともないのだが、どういうわけだか、バージョンダウンすると文字データが一文字ずつバラバラになってしまう。私も新バージョンに慣れていなかったということもあって、どうせなら最初からバージョン8で作ってしまえ、と図版は旧Macで作ることにした。InDesign CS3の使い方を勉強をしながらの仕事、というだけで手一杯だったし。
さらに、この仕事は写真、図表の点数が半端な数じゃないので、Exelで写真や図表を管理しないとどうにもならない。Microsoft OfficeはWindowsに任せているので、Windowsマシンも必要になってくる。
というわけで、デスクの中央の新MacでInDesignを使いつつ、右側の旧MacでIllustratorおよびPhotoshopで貼りこみ用の画像を作る。左側のWinでは写真や図表の管理と、パソコン3台を同時に使いつつの仕事ということになったのだ。
おかげでキーボードの打ち間違えやショートカットのミスは多発し、別のパソコンのマウスをつかんでいたり、旧Macでマウスのスクロールホイールを探ったりと、操作は混乱をきわめた。
とはいうものの、目的別にパソコンがあって別のパソコンの画面を見ながら作業ができるというのは、1台でいろいろなソフトを立ち上げるよりも見やすくかつ安心で、意外なことになかなか快適だ。
3.
PDF入稿とフォント
この仕事で初めてPDF入稿というのをした。PDFにする際にどういうデータにするか、などで多少ややこしいことはあったものの、あまりの軽やかさに驚いた。
通常カタログなどの入稿データというのは数百MB、へたすればGB単位の厖大なもので、しかもレイアウトした本体のデータと張り込みのデータを合わせるとファイルの数が数十〜数百、数千にも及んだりする。これらをMOにコピーして入稿、もしくは圧縮したものをこちらのサーバーに入れてダウンロードしてもらう、というのがいままでの状況だった。修正があれば、印刷所でいじったデータがまた戻ってきてそれを手直ししたのを再入稿、または修正ファイルのみをメールで送信という手順である。データが重くて数が多いというのは、そうとうなストレスになるのだ。
それが、今回はPDFファイルのみの受け渡しということで、本来なら千以上あるファイルがたった7つのファイルだけですんでしまった。本当にこれだけでいいの? と仕事の担当者と確かめ合ったりしたくらいのあっけなさ。
もちろん、これでなんの問題もなく印刷物は刷り上り、とにかく感動の初体験だった。
とはいえ、なにもかもがすんなりいったわけでもない。前述したように、印刷所からフォントはNewCIDにしてくれという注文がついたのだ。PDFで入稿するというのにである。Opentypeって機種依存しないのでこちらの好きなように使用できる夢のようなフォントだと思っていたのに、なんだか釈然としない。しかし、NewCIDじゃなきゃ責任が持てないといわれてしまえば、従うほかない。おかげで一通りOpentypeをインストールしてあったのに、さらにNewCIDの同じ書体をインストールなんていう面倒なことになってしまった。
その後、他にもいくつかの仕事で入稿を経験したが、やっぱりOpentypeはまだまだ敬遠されているようだ。さらに、前回の簡単さに味をしめて他でもPDF入稿をしようとしたところ、Illustratorのデータじゃなきゃ受け付けない、などという印刷所すら現れた。この時はなんとInDesignで作ったデータをPDFにした後、そのファイルをIllustratorで開いて保存するという、とんでもないやり方での入稿となった。
4.
旧Macはまだまだ現役
大物の仕事はとりあえず片がついたのだが、これは今後も年2回の改定がある。要するにその度にパソコン3台同時使用の必要性が出てくるということだ。でも、この仕事が終わってからは旧Macの出番はなかなかなく、カラダは快適な新Macになじみつつある。ここはなんとか本格的に「乗り換え」がしたいものだ。旧Macもいつまでもつかあやしいし。
あれこれ「乗り換え」の模索をしていると、昨年作ったパンフレットの改定の仕事が舞い込んだ。QuarkXpressで作ったものである。さあ、これをエクササイズとして「乗り換え」が可能かどうか試してみよう、とファイルをInDesign CS3で開いてみた。文字のツメ情報はなくなり、がたがたに崩れ、これを修正するというのはとんでもない作業量になりそうだ。なんといってもQuarkXpressで作ってある、ということはそこそこページ数のあるものだということだし。
結局、Illustratorのデータを新Macで開いて修正、保存した後、文字をアウトライン化したものをバージョン8にして新規保存。これを旧MacのQuarkXpressで読み込んで作り直し、という前回の仕事とは逆の使い方で対処することになった。
旧Macには、使い放題の契約をしたメーカー以外のフォントもいくつか購入してインストールしてあることだし、いずれにせよ、まだまだ必要ということらしい。はてさて、パソコン3台勢ぞろいはいつまで続くことやら。
しかし、普段あまり使わなくなったパソコンの使い方というのは、驚くべき速さで記憶のかなたに消えていくものだ。QuarkXpressからPDFファイルの作り方などまるっきり覚えてなくて、「PDFファイルを作る(覚書)」の文章をじっくり読むことになった。ああ、ここに書いておいてよかった。
2008年8月14日