バルコニー庭園の変貌
1.
バルコニー園芸の悲劇
我が家のバルコニーというのは、手摺りは木製の壁が立ち上がっているだけで、内側をグレーのペンキで塗った、まるで水のないプールみたいに味も素っ気も無いものである。植物を育てる空間としては殺伐たるもので、せめて雰囲気だけでも庭らしさが欲しい。そこで、植物がより美しく見えるようにいろいろな工夫を凝らしてきた。雰囲気作りには本物の素材を使うのが一番。部分的にレンガを敷き、大振りな素焼き鉢にイチジクやらサンゴシトウだのの樹木を植え、隙間にも植物を植えた素焼き鉢がたくさん。木製のラティスと手摺りには素焼きの吊鉢から垂れ下る植物。
植物達は年々大きく育ち、生い茂り、素焼き鉢はほど良く苔むし、味気ないグレーの空間は、いつしか土の香りがするずっしりとしたいい感じの空間に変貌していった。
そして新築から10年の月日がたち、毎日雨ばかりが続いていたが久しぶりに晴天に恵まれたある梅雨の日。バルコニーは日当たり抜群でたった1日晴れただけでも鉢はすっかり乾いてしまうので、ホースで水撒きをしていた。すると階下から夫の怒鳴り声。なんと2階から3階にあがる階段の下部分に水溜りができて、それがどんどん広がっているではないか。どうやら鉢やらレンガやらの重みで床がたわんで隙間ができてしまい、そこから水漏れが起きたようだ。
それまでもその付近で壁紙がべろべろとはがれてきていたのだが、10年もたつとこうなるのかなあ、と思っていただけだった。しかし、実は床のたわみは着実に進行しており、水漏れしてはいたのだが、梅雨の湿気で木材が膨張し、隙間が詰まっていて顕著にならなかっただけのようだ。晴れて木材が乾燥したとたん、一挙に隙間が開き、水溜りクラスの水漏れに発展したということ。雰囲気作りの努力の末はとんでもないハプニングと相成った。
さて、そこからが大仕事。その近辺から重い素焼鉢をすっかり移動し、泥汚れを掃除し、乾かしてから隙間に充填剤を詰めるという作業となった。ああ、しんどかった。
結局敷き詰めたレンガはすべて撤去。家周囲の庭とも呼べない隙間に移動し、素焼鉢はプラスチック製のものと交換することにし、鉢は近所の人にもらってもらった。
ともあれ、木造一戸建てのベランダやバルコニーではくれぐれも重量を考慮すべし。水漏れするまでその事実に気がつかないというのもなさけない話ではあるが。いや、実は気づいてはいたのだが、気づかないフリをしていた、というのが真相かな。
2.
プラ鉢って悪くないかも
さて、そんな経緯で、雰囲気のある苔むした素焼き鉢とレンガのバルコニーは一転、軽やかでチープなプラ鉢の並ぶ空間に変貌した。プラ鉢の色は明るいサンドグレー、ベージュ、白。重さに懲りた心境がうかがえる軽さをイメージさせる色のラインナップ。実際には日当たりが良すぎるので暗い色だと熱を吸収して具合が悪いという意味からなんだけど。
でも、すっぱい葡萄のように聞こえるかもしれないけど、この騒動のおかげでプラ鉢に入れ替わり、ちょうどよかったかもと思っている。というのも、やっぱり10年前に比べるとぐんと体力が落ちていて、重い素焼き鉢は手に余るようになっていたから。 それに乾きまくりの我が家のバルコニーでは、案外プラ鉢は素焼鉢よりも生育状態がいいようで、怪我の功名だったかもしれない。
2009年4月12日