加齢なる日々
1.
老化の気配
根がずぼらで、常にきっちり染めておくのは性格的に無理と早々と見切りをつけていたので、いまだかつて髪を染めたことはない。でも、20代の後半にはもうちらほら白髪が出始めたので、40になる頃にははっきりとグレーになっていた。これが一番わかりやすく現れた、最初の老化。ただ、あまりそういうことは気にならない性格のため、ショックだの悩みだのになるには至らなかった。
スポーツをやるわけではないので、体力の衰えもひどく感じたり悩んだりするには至らず、顔のシワなどはできにくい体質なので、これもまた、ほぼ感じない。私のとって最初にズシーンと襲ってきた老化ショックは、なんといっても老眼だった。
30代後半の頃、メガネを新調しようと眼鏡屋に行くと、店員がにこやかにテーブルの上のパンフレットを指差し、「そのメガネだと文字が読みづらくありませんか」と聞いてくる。まだ、老眼なんて全然先の話だと思っていたので、話題を振られたということだけでショック。しかも、よくよく見てみるとメガネを外した方が断然見やすいということに遅まきながら気がついた。私が老眼〜?30代で〜?再びの大ショック。結局、遠近両用メガネというものを作ることになってしまい、人はこうやってだんだんに自分の老いを認めながら生きていくんだなあ、と感慨にふけることしきりだった。
老眼はその後すみやかに進んでいき、さらに近距離用メガネまで作ることになったことは「老眼とWEBデザイン」で書いたとおり。パソコンを激しく使っていると老眼の進みがうんと速いようだ。少なくとも私は。
2.
40代突入。そして……
40代になってからは、気配どころの話ではない。40歳ジャストから老化ショックに直撃した。40歳になっある朝、起きると肩が痛い。それも、洋服を着るのすら一騒動というほどの激痛である。手を上に挙げるなんて全然できないし、体をヘタに動かすととたんに痛みがやってくる。翌日実家に行く予定になっていたのだが、あまりの痛さに行けそうもない。電話で母に話すと、いともあっさりと「そりゃ、40肩だわ」。愕然。
40代といえばそこそこの年齢という認識はあるので、まあ、これからいろいろあるんだろうなと、おぼろげに覚悟はしていた。しかし、40歳ジャストで40肩とは。だって50肩という名称もあるということは50過ぎてなる人もたくさんいるということで、40代でなるのは昔の話で最近は50肩になったんだろうと勝手に思い込んでいたのだ。だから、40歳ジャストで?人より老けやすい体質だっての?と、けっこうはんぱでない精神的ショックと、肉体的痛みとでどっしり落ち込むこととなった。
サイトで調べると、ますます40肩は確実に思えてくるし、これがどうやら数ヶ月も続くというではないか。一挙に暗い気分にひたりまくることになってしまった。ただし、私はまったく逆方向に思い違いをしていたらしく、昔は50肩が多かったが、最近は発症が低年齢化して、40肩とよぶことが多くなったんだとか。だからって、たいした慰めにもならないけど。
一挙にどーんと落ち込んでしまったものの、ありがたいことにこの痛みは1週間ほどしか続かなかった。じつにあっさりと日常生活は帰ってきて、あまりにも短かったので、ホントに40肩だったのかなあ?という疑問と精神的ショックの残骸だけが残った。
そして、43歳の時には子宮筋腫になって手術をした。老化というわけではないが、子宮摘出をする決心をしたことで、ますますもって現役から引退しつつあるという気分が濃厚になった。この時には、さすがにストレスずっぽりで10円ハゲもできた。まあ、これも終わってみれば「ラクになったな〜」というお気楽な感想で決着がついちゃったのだけど。
3.
腰痛に苦しむ
さて、決定打は昨年の48歳のこと。梅雨頃からいつになくひどい夏バテで、夏中ぐったり。なにもする気になれない。おまけに腰痛が出てきて、それが延々続いた。とにかく朝起きると痛い。動くと痛い。デスクに座ると痛い。一日中、腰の痛みが頭から離れない。夏バテとダブルパンチなので当然気分は沈みまくり。それでも歩くといくらか腰痛が楽になるので、せっせとウォーキングはすることにした。さらに、水泳がいいらしいと聞き、プール通いもした。泳ぐのは割りと好きな方ではあるのだが、プールに行くと、着替えたり洗濯したりと面倒なので、普段はそれほど行きたいとも思わない。それが、痛みがあまりにもつらかったので、ほぼ毎日通い詰めることになった。
たいてい朝イチでプールに行き、泳ぐとその直後はかなり調子が良く、でも、デスクワークをするうちにまた痛くなる。そして夜はウォーキングとお風呂とでやや良くなって寝る。でも起きた時にはまたもや猛烈に痛い。この繰り返し。腰痛にいいというエアマットという寝具も買った。腰痛体操もやった。でもやっぱり痛い。
痛い痛いとうめきながらだらだらと過ごした夏も終わり、腰痛が始まって4ヶ月くらいもたったある日、ウォーキングがてら図書館に歩いていったのだが、目的地について立ち止ったとたん、大量の汗がふきだしした。私は普段から暑がりで汗っかきではあるのだが、ちょっとこれは普通じゃない。周囲の人たちはたいてい長袖になっている時期に半袖のTシャツを着て、そのTシャツが汗で色が変わり、持って出たタオルハンカチは絞れるほどぐっしょり。これは人間のレベルを超えて、もはや妖怪レベル。さらには首筋に暖房器具を至近距離から当てられているかのような熱気……。
4.
ああ、更年期
ここで初めて、ここしばらくの事態が理解できたような気がした。これこそが更年期障害というヤツではないのだろうか。その日はせっかく図書館まで行きながら、とても中に入れるような状況ではなく、そのままUターン。家でさっそく調べてみると、初夏以来の症状がすべて典型的なパターンだと判明。子宮筋腫で子宮がなくなってるからそっち方面の情報が欠落しててまったくわからなかった。これでついに、本当にプレ老年期に突入しちゃったわけか。あーあ。そして、これが数年も続くのかぁ。
さらに症状を言えば、強烈なマイナス思考とウツに近い状態がつらかった。これが更年期障害の症状だってわかっていなかったら首吊りでもしたくなるくらいに。暗い思考はとめどもなく、熟年離婚が多いという話だが、これってほとんど更年期障害が原因じゃなかろうか、と思いあたった。常におまじないのごとくに「これには原因がある。これは一過性の病気。ポジティブに考えよう!」と自己暗示をかけていなかったら、とても正気は保てそうになかったもの。まあ、ある意味仕事が救いだったのかもしれない。仕事が入るととりあえずはみんな忘れて没頭できたから。
そんなわけでその後年内いっぱい、たいへんつらい思いをした。ところが、どういうわけだか年明けとともに症状は軽減。春になる頃にはきれいさっぱり腰痛は直り、気分の沈滞もなくなり、再びいろいろなことにやる気もでてきた。どうやら1年足らずで全快しちゃったようだ。
40肩も更年期障害もそれなりにひどかったけど、どちらもものすごい勢いで去ってしまった。やっぱりこれはラッキーな体質なんだろうな。老眼のハイスピードには困ったものだけど。
気分的には病気が良くなって若返ったという感じなのだが……、つまりはこれでプレ老年期から本当の老年期になっちゃったということなのだろうか。いまだになんだか信じがたい気分。
2009年6月1日