タバコ、ジョギング、ウォーキング
1.
たぶん卒煙
昨年6月30日を最後に、タバコをやめた。つもりである。たぶん、とか、つもり、というのは、もちろんわが身に対する自信のなさの表れなんであるが、それでもすでに9ヶ月。自分が一番びっくり、の快挙である。
背景をざっと説明すれば、大きな声では言えぬことではあるが、未成年時代から吸い始め、本数の多寡の動きはあったものの、以来、平均してもなおヘビースモーカーの仲間には入れちゃうだろうな、というクラス。昨年頭くらいにはざっと1日に50本はいってた。なにせ、仕事が家の中で、夫は私をはるかに上回るチェーンスモーカーという、拘束も遠慮もない環境下にいたわけだから、そりゃあもう、ひどいものだった。
タバコに関しては、当然、健康にはなはだよろしくない、くらいの常識は理解していた。やめた方がいいんだろうなあ、とは常々思ってもいた。だから、何回か禁煙にトライはしたこともある。が、意志力の弱〜い私にはやっぱりできなくて、せいぜいが3日くらいのもの。病気で入院した時ですら、それを機会にやめればいいものを、喫煙所に行きたいあまりにリハビリに励むというていたらくだった。
それがなぜ、今回やめたかといえば、実を言うとここぞという強烈な理由はない。もちろん健康上の不安は歳とともに増大してきたし、世間は嫌煙権運動真っ盛り。家の中はともかく、一度でかけるとなかなか吸える場所すらみつからないし、その傾向は加速度的に高まっている。とにかく居心地が悪いことおびただしいんである。
要するに、世間に追い詰められているというあせり、これが飽和状態になったというところだろうか。COPDも相当怖かったし。まあ、ともかく6月末ころになって急に「タバコをやめよう」と思い立った。ただし、過去に何度も失敗してるから、急に思い立った割には、準備はけっこう念入りにした。
準備というのは、とにかく「覚悟を決める」こと。「とりあえずやめてみる」のではなく、「永遠のお別れ」の心の準備をしたわけだ。喫煙者なら、たいていの人が解ると思うけど、タバコに対して甘美な思い入れが少なからずあり、「永遠のお別れ」っていうのは、相当に悲しく、覚悟がいるものなのだ。
そして、やめるにあたっての方法。かつて話題を呼んだ、アレン・カーの著書「禁煙セラピー」を読んだだけ。「読むだけでやめらる」といううたい文句にははっきりいって眉唾だったのだが、まずは、疑り深い自分をぐっと抑え、これからこの本に洗脳されてやるんだ、という自己暗示をかけてから読んだのが、なんとか功を奏したようだ。本に書かれているほどラクラクやめられたわけではなく、いまだに吸いたくなる時も多いのだが、まあ、兎にも角にも9ヶ月。ひとまず、めでたしめでたしなのだった。
2.
ジョギング初体験
タバコをやめると太るというのはよく言われていることなので、ある程度は覚悟していた。タバコをやめるとどうやら基礎代謝が減ってしまうらしい。タバコの代替品として何かを食べてしまう、とか、味覚が鋭敏になって食べ物がおいしくなる、とかいう話もあるようだが、私は両方ともあまりなかった。そして最初から警戒していたので、タバコをやめるのとほぼ同時にジョギングを始めたのだ。
ジョギングは学生時代以来では初体験。それまでは、学生時代のつらかった経験を思い出し、もう生涯長距離走なんかしたくないもんだ。あんなしんどそうなこと、よくやってるなあと、公園のジョガー達に冷ややかな視線を送っていたのだが。
だから、こちらの方はタバコをやめる覚悟とはまったく違い、「とりあえず、どんなもんだかやってみる」という感じで始めた。最初は近所の公園を1周。案外楽にできる。そして2周、3周と増やしていく。驚くべきことに、走るのってけっこう楽しい。走ると身体から早くニコチンが抜けていくような気にもなるし。なんだか、どんどん癖というか中毒のようになっていき、1ヶ月もたつと、神田川の遊歩道を毎朝約6kmというのが日課になってしまった。
さてこのジョギング、いったいわが身にどんな効果をもたらしてくれたか。タバコはやめたけど、おかげで体重は減少、ますます健康になって素晴らしい!というのが、当初のもくろみだった。しかし、見通しはぜ〜んぜん甘かった。ほぼ毎日6kmのジョギングは、体重減少どころか体重増加の歯止めにもならなかったのである。なんて悲しい。それから6ヶ月、12月までジョギングは続けた。にもかかわらず体重はかなりの増加。いったいジョギングしてなければどこまで太ったんだか。空恐ろしい。
そして、さらに悲しいことに、それだけではすまなかった。健康になるどころか、毎日走るうちに左足の踵が痛くなって、それは日を追うごとに悪化、年末にはびっこをひかなきゃ歩けないくらいまでになってしまったのだ。
年が明けて、さすがにこれはもうだめだと、病院に行った。するとなんたること、痛みの原因は、加齢と体重と急激な運動だという。体重落とすためにやってたっていうのに、どうしたらいいんだ。医者からはとりあえずジョギングはやめるようにというお達し。「まあ、一番いいのは水中ウォーキング。せいぜいウォーキングにしておくといいですね」と言われて、せっかく楽しくなってきた初体験のジョギング生活はやめることになってしまった。残念。
3.
ウォーキング三昧
そんなわけで、その時からこんどはウォーキング生活が始まった。さらに念のため靴のインソールも買い、足の健康にも気配りをする。時は冬のまっさかりでウォーキングには実に都合がいい。
朝ごはんの後でひと歩き、昼ごはんの後でひと歩き、夜ごはんの後でもひと歩きと、日々歩き回る。歩数計ももちろんしっかり身に着けて、1日に1万歩以上を目標にしていた。さらに運動だけじゃ太るのを阻止できないことは身にしみてわかったので、若干の食餌制限もプラスする。
そして、1ヶ月。どうにか体重増加はストップした。が、いつまでも現状維持じゃあちょっと困る。そこで、さらに歩く距離を伸ばしていった。仕事が忙しくない時が数日続いたので、連日2万歩を超えるほど歩き、雨の日は自宅の階段でステップ運動。これで、やっと体重のマイナス傾向が見えてきた。
ところが、今度はどうも右足の付け根や腿のあたりが痛い。左足の踵の痛みは完治までいかないがそこそこ和らいでいたのに、こんどは右かい。それでもやせたい一心で歩いていると、どんどん痛みが増してくる。ついに、降参して、またしても病院のお世話に。
レントゲンをとっても悪そうなところはないし、結局診断は「歩き過ぎ」。ああ、またしても。こんなに健康に気を配って努力してるというのに、なんと報われないことか。
本当はジョギングに復帰したくて、でもそのためには体重を落とさなきゃだめだし、ジョギングどころかウォーキングですら障害が出ちゃうし。まったくもう。残るは、水中ウォーキングか。でもプールってなにかと面倒だしなあ。
そうだ、まだ、サイクリングという手があったっけ。ということで、この春はせいぜいサイクリングをがんばるつもりだけど……、さて、この結末はどんなことになるやら。今度は気をつけて、あんまりがんばり過ぎないようにがんばろうっと。
2010年4月9日